震災の時、娘は4歳になったばかりでした。九州の山間部に住んでいることもあり、地震も津波も放射能汚染も、どこまで感じ取ることができるのか、また、私自身も、どこまで感じ取れているのか、自身がありません。
行ってきまーす…お父さんや弟に手を振って、スクールバスに乗り込む主人公のまいちゃん。バスで仲良しのさきちゃんとおしゃべり。
「いつもの一日が始まって」いたはずでした。
ところが、午後、国語の授業の時間に 経験したことのない大きな地震が突然やってきました。
ここから、恐怖、不安、突然の、あまりの変化への驚愕、そんな思いが、淡々と描き出されていきます。
自衛隊の人がお風呂を沸かしてくれ、ボランティアのかたが豚汁を提供してくれた中、白い湯気の中で人々に笑顔が戻ったこと。
一ページ一ページの絵が、ひとこと、ひとことの文が、重くなりすぎず、けれど、子どもの小さなこころの変化を的確に伝えてくれるよう感じます。
まいちゃん、さきちゃんのふたりも、身の周りの沢山の人達や、かわいがっていた家畜が命を奪われました。お父さんと弟を失ったさきちゃんは遠くへ転校することになりました。
たんぽぽの咲く校庭で二人は、そんな亡くなった命たちへたんぽぽの花をお供えしながら、再会の約束をします。さきちゃんの、「泣いているような笑顔」はやがてにっこり笑顔に変わります。運命を受け入れ、強く行きていこうとしている子どもの力強さを感じました。
しかし、実際に被災された方々が読んだら、ひょっとしたら、「こんなもんじゃない…」と本を閉じたくなる方もあるのかもしれないな…とも思いますが、作者があとがきで「明るい笑顔の花があちこちに咲くように願って」と書いてあるとおり、娘には この本の、たんぽぽのような強い生命力、明るい前向きな思いが伝わったようです。
「わたし この本、おとなになっても ずーっと好き」
そう言いました。