ちょっぴり亭主関白でいて、息子に優しいとうちゃん。「今日は銭湯に行くぞ」と決めるあたりも、家族の決定権は、とうちゃんが握ってるぞ的な。
かあちゃんは、亭主と子どもの一、二歩後を、優しい眼差しでもって、ついていく。ぼくはと言えば、銭湯に行ける日は特別な日。とうちゃんが、決定した瞬間から「やったー!」とテンション↑↑。
登場人物のとうちゃんしかり、かあちゃんしかり、ぼくしかり、すべてにおいて、昭和のノスタルジーたっぷりのパンダ銭湯である。
私にとっても銭湯は、テンションの上がる場所だった。家族で行った記憶は、自分がまだ小さすぎて覚えていないが、母の育児記録によると、産後退院してすぐ、行きつけの銭湯に行き、風呂屋の主人や常連の人たちから「おめでとう」と声をかけてもらったとある。
小学生にもなると「なあ、今日、友だちとお風呂屋さん行ってもいい?」とドキドキしながら母に聞き、「いいよ」と返事が返ってくると、このぼくのように「やったー!」とテンションが上がったものである。
読めば読むほど、見れば見るほどに味が出てくるパンダ銭湯。
保育士をしているので、是非とも子ども達にもこの面白さをわかってほしいと読み聞かせをするのだが、スーパー銭湯が主流の昨今、果たして昭和のノスタルジーなどかけらも知らない平成生まれの子ども達に、どこまでこの絵本の面白さを、伝えきれることができるだろうかとやや不安になる。しかし、子ども達にはちゃんとウケるのが、このパンダ銭湯の世代を超えたすごい所である。
そして、裏表紙の家路につくパンダ親子の後ろ姿を見て「あー!ぬり忘れてる!」と見つけるのは、5歳児の子どもたちの方だったりする。昭和生まれの私は、そこまで気付いてなかったのだ。