2011年3月11日、東日本大震災。地震と津波のニュースが流れた。あれからしばらく経って、TV番組で「津波てんでんこ」と言う方言を初めて耳にした。「てんでんこ」とは「てんでんばらばらに」の意味で「人にかまわず必死で逃げろ」とのこと。これは親子でも家族でも、だそうだ。とても衝撃的で、非常な言葉に感じた。でも東北、特に沿岸部では、この「てんでんこ」と言う言葉が代々伝われ続けてきたと言う。それだけ非常事態で、それだけ重い、大事な言葉であることは感じられた。「てんでんこ」に感じられ、今も復興のお手伝いをしながら取材をしているフリーライターの指田氏により震災から約3年後にこの絵本が出版された。小学校・中学校の生徒の目線で、あの日震災当日の様子が子供たちの会話と迫力ある挿絵から伝えられる。
きっと何がなんだかわからないながらも身を守る事の一生懸命な子供達、少し経ってからの哀しみ絶望などもほんの僅かしか分かって差しあげられないもどかしさも感じつつ、自分が今出来ること、しなければいけないこと、忘れてはいけない一つとして考えさせられる絵本。
そして最後に「人間は海から恵みをもらうばっかりで付き合い方を忘れてたのかも知んねいな」「命さえあればこれからなんだって出来るもんな」と言うじいちゃんの言葉がグッときた。