教科書にも書かれているし、このお話はよく知っているのですが、視覚化すると何とも言い難い雰囲気の違いを感じさせられます。
黒井さんの絵はごんぎつねの心を繊細に淡く描くことで、作品をさらに奥深い映像としたように思います。
ごんぎつねはいたずら好きで、悪さばかり繰り返していたようですが、母親思いの兵十がとっていたウナギを逃がしたことと、母親の死が重なり、深く反省するのです。
その心持が痛く伝わってくる描き方だと思います。
しかし、兵十への罪滅ぼしと思って行うことが、兵十にとっては災難に変わってしまいます。
最後にごんぎつねは銃で撃たれてしまいます。
しかし、兵十は山の収穫物を届けていたのがごんぎつねだったことを知るのです。
ごんぎつねが自分の行動を認められて息絶えるところは、黒井さんの絵でとても余韻が残る作品となりました。
ここまでくると、絵本も芸術だと思います。
他の絵本がひらがな表記であるのに、漢字を多用している点も考えると、高学年向けになっているように思います。