自分の子どもに読むより小学校の読み聞かせに使うほうが先でした。
うちの小学校は5年生でコメの栽培を行います。だから自分たちの田んぼのお米の収穫が気になる季節に読んであげるのにぴったり!なのです。
舞台はインド。領民から搾りつくした倉の米を、しかし飢饉の時にも分け与えようとはしない傲慢な王に、1人の村娘が知恵で挑みます。王からほめられるシチュエーションを自己演出、褒美をなんでもとらせようという言質をとった上で、求めたのは「1つぶのおこめ」。今日は1つぶ、明日は2つぶ、その次の日はその倍の数だけ、ひと月のあいだいただきたい。
勘のいい方はおわかりのように、これは等比数列の和を求める、1番シンプルな例題です(こんな美しい教科書で学べたなら高校数学で脱落せずにすんだかも)。
学校の読み聞かせは時間が限られているので、絵本のちょうど半分あたりまでは絵を見せながらダイジェストで説明してもいいかもしれません。そこまではいかにもゆったりとしたお話ですので(もちろんそのじっくりといく感じが、アジア、インド、な魅力なわけなので、時間に制限がなければ落ち着いて読んでいきたいところです)。
聴く子どもたちも総計500粒を超すあたり(9日め)から目が輝き始めます。ソロバンを習ってる子は頭の中で猛烈に計算しているはず。そして折り返しのページはどれも、思いっきりたっぷりと絵を見せてあげましょう。ラストではもうみんな登場人物たちと一緒になって大喜び!
日本では曾呂利新左衛門と太閤秀吉の逸話として、また彦市とんち話として知られるお話でもあります。アニメの一休さんでもとりあげられていた気がします。江戸時代には和算の例題としても使われました。ロシアでは麦バージョンがあるとか。でも取り扱われる数の壮大さ(10億超え!)からして、これはやはりインドが元祖なのでしょうね。
インドの大学で美術を学んだという作者の手による抑えた金色がことに美しく、読者を数の神秘を語る物語の世界にいざないます。さらに絵巻風の絵が、目線を左から右へ右へ、次のページへと連れて行くのです。
邦訳はまだ2冊のみ、もっと紹介してほしい作者です。高学年の子どもたちが声をあげて喜ぶ本って、めずらしいんですよ。