美しい数学シリーズの7番目の本です。
“むかし あるところに なまけものの おとこがいました。ある冬
の日に、仙人に ふしぎなタネを 2こもらった ”ところからおはな
しが始まります。
“ひとつ(ひとつでもおなかいっぱいになります)はたべて、もうひ
とつは 地面にうめておくと らいねんの秋に はかならず みのって
2こに なる 。これを くり返していれば ずーっと おなかがへる
ことはない”といわれ、おとこは いいつけを守り、これを何年かつづ
けました。 でも、あるとき 男は気づきます。たねを増やすことを。
ここから、算数(数学)の出番です。
読んでいるうち、一粒のたねの力の尊さに心うたれます。
そして、自然界との(戦いを含めた)共存のための人間の知恵の歴史に
感動します。
昨年、5年生を対象に「朝読」で使いました。増えていく種の数を一
生懸命に計算していた子もいました。
今年、息子も5年生になり、1年生の時に読んだのとは異なり「たね
ってすごい!」「農業はたいへんだ。」「農作物の余りから商業がはじ
まったのかな。」「なんてったって、いのちだよな。いきてりゃ、なん
とかなるさ。」なんてことをぶつぶつ。
なんといっても安野先生の描かれる人物は、静かさの中に躍動感があ
ると思います。どのページも美しくほほえましく、子どもたちも心落ち
着けて読めると思います。
小学生の読書量は、2年生がピークであとは右肩下がりということを
良く聞きます。
3〜6年と、テレビやゲームやカードを含め、たくさんの関心事や、
交友活動、サークル・クラブ・部活動もあり、彼らの生活の幅も広がっ
てくる故、読書の時間を意識的に持たなければ読めなくなるのも必須で
しょうが、どうしても「読書の喜び」を伝えたく、選書に四苦八苦して
います。
この作品は、絵本から「読書の次のステップ」へと上手に子供たちが
移行していくうえで、導いてくれる良書であると思います。