秋になったので、どんぐりのお話を と
5年生の読み聞かせに選びました。
園児のコウくんとどんぐりのお話なので
5年生にはどうだろう もう少し小さい子向きかしら と迷いましたが
おとなになったコウくんが「ケーキ?」と聞くところが私は大好きで
この再会の場面を味わえるのは高学年から
と思い直し読むことにしました。
ずっとずっとコウくんの足音に耳をすまし、見守り続ける‘ぼく’は
若い日の片想いにも
成長する子どもを見つめる親心にも似ていて
どんぐりの‘ぼく’にいつしかどっぷり感情移入。
だから、コウくんの「ケーキ?」が嬉しくてしかたない。
「ケーキ」と名付けられた時点で
コウくんと‘ぼく’は人対物ではなく
特別仲良しなふたりになったのでしょうね。
幼い日の記憶は
いつしか忘れ去られたようにみえて
実は心の奥深くに眠り続けていて
ふとしたきっかけで目を覚ますのでしょう。
春を待って眠るどんぐりのように。
ふたつの「うれしいことです。」
ひとつめは平坦に、
ふたつめは「こと」にアクセントをおいて読みました。
間をおいてゆっくりと。
しみじみとしたうれしさの余韻に包まれ
それをこわさないよう
手がそっと静かに本を閉じていました。