赤と青の色違いのボタンに同じおかっぱ頭の女の子。読む者を惹き込む随所へのカラフルで愉快な世界への描写が、ページを繰る手を進ませる。
今回は雨の日のお話。雨の日でも逆さ雨で噴水のような雨の上を自転車で渡るシーンなど、日常の凝り固まった頭を解きほぐしていくような感覚に包まれる。大人の休日のホッと一息つく時間にも、主人公のお茶会のような気持ちでくつろげたらどんなに楽しいだろうか、と思わせる。
ツインのキャラクターなどで一方が影に隠れてしまう存在になりがちの現実世界の厳しさとは打って変わって、同じビジュアルの二人が共に楽しんで進んでいくこの絵本の世界のような快さは、きっとこの本の中でしか味わえないのだろうなと思う。一人一人が個性を打ち出すのが常の欧米とは違った日本的なかわいらしさがあるが、現実の人生ではツインの人生にはならないよう、気をつけたいと改めて思った次第である。AI時代への密かな警鐘までは、このお話には含まれていないようだ。
まずは純粋にこの絵本の愉快なお茶会シーンを楽しんでいただきたい。