第二次世界大戦下のオランダの話。10才の男の子ピートは、じいちゃんから大役を任されます。ドイツ兵から身を隠す必要のある近所の子ども二人を隣国のベルギーに送り届けるようにと。
オランダでは冬、凍った運河をスケートで滑ることが移動手段の一つです。ピートはスケートが得意。子ども三人がスケートをして遊んでいるふりをして運河を滑り、国境を越えるのです。
兵士の目をごまかせるでしょうか?道は間違えないでしょうか?まだ7才の小さな子はついてこれるでしょうか?でも、行くしかない。「・・わたしたちオランダ人はね、運河でスケートをするのが好きなだけじゃない、ほんとうはとても勇敢なのよ」という母さんの言葉を胸にして。
ピートの勇気もさることながら、大切な孫、息子のピートを信頼して送り出すじいちゃんと母さんの勇気もまたすごいものです。戦時下という特殊な場面では、否応なく人は強くなるものなのでしょうか。我が身の危険を顧みず隣人のために力を尽くす・・。同じオランダで、隠れ家に住むアンネフランクの一家を支えたミープ・ヒースさんのことなども思い出されました。たくさんの人への謝辞に作中の人々の関係者と思われる名前が多数あり、事実を元にして書かれた本なのだろうと推測されます。このことに気づいてから再読すると、より胸にせまるものがありました。
また、スケートが暮らしの中に根づいているオランダのお国柄、気候・風土など、日本とまた違う暮らしを知ることができました。子どもたちにとっては、視野を広げ、勇気あるピートの行動から学び、読むことによって自分もまた成長することのできる本だと思います。