愛する人を喪うのはつらい。
そういう人にどう声をかければいいのか、そばにいてもわからない。
それが小さい子どもであれば、余計につらい。
この絵本は、愛する人を喪う悲しみ、それを克服していく過程を描いている。
雨の告別式が最初の場面。たくさんの参列者の傘の列。父親に抱かれて小さな男の子。そしてそのお姉さん。
「おかあさん、どこに いっちゃったんだろう?」
男の子はお母さんの死が理解できない。
家の中をさがしても、お母さんはいない。お墓の花を替えにいっても、枯れている花を見て、お母さんは取りに来ないと、思うほど幼い。
男の子はもしかしてお母さんが戻ってこないのは、自分のいたずらのせいかと心配する。
ある日、お父さんにお母さんはいつ帰ってくるのってたずねてみた。
お父さんは、男の子にお母さんは死んで天国に行ったのだと教えてくれたが、男の子は天国がどこにあるのかわからない。
でも、しだいに男の子はお母さんがいなくても、お父さんやお姉さんとやっていかないといけないのだとわかるようになっていく。
男の子の大好きだったお母さんはもどってくることはない。
悲しみを小さくしていくことだけ。
男の子は少しずつお母さんの不在を受け止め、残された家族との暮らしを受けいれていく。
イギリスの絵本作家レベッカ・コッブは色あざやかな色彩を使いながら、しかもハデにはならないようにして、愛する人を喪ったものがどのようにして立ち直っていくかを見事に描いた。
日本語訳を担当したおーなり由子はこの絵本の最後にこう記している。
「のこされたひとは、生きていかなくてはならない。(中略)わたしは、くりかえす毎日の、なんでもない時間にたすけられました」。
もちろん、何年経っても何十年経っても、悲しみは消えないだろう。それでも少しずつ残された人は前に向かうしかない。
子どもたちにこの絵本が伝えたいことを教えるのは難しいかもしれないが、きっと子どもたちにもわかるだろう。絵本は心に届くはずだから。