今まで、「ケストナー=ドイツの児童文学作家」 としか思っていませんでしたが、この本を読み、ケストナーは、演劇作家、詩人、脚本家、小説家、エッセイストなど、実は、多くの顔を持つ人だったと知りました。
出生の秘密、マザコンともいえる母との関係、家庭環境、女性関係など、一人の人間としてのケストナーも描かれていて 興味深かったです。中に挟まれている子どもの頃からの何枚もの写真からは、内にたくさんのものを秘めている人という印象を受けました。
ナチス政権を批判し、そのことから身の危険を感じつつも、「時代の目撃者」でありつづけるために亡命しなかったケストナー。強い意志を感じます。そして、彼がドイツで生き延びることができたのは、運が良かったこともありますが、本物の実力者であったからではないかな?と思いました。なにしろナチスが、自らに刃向かうケストナーの実力を無視できずに、外国での出版を認め、外貨獲得のために利用しようとしたのですから。
子どもの頃、ただ楽しく読んでいた「エミールと探偵たち」や「飛ぶ教室」ですが、ケストナーの人生を知った上で、今 読むと、また違ったものが見えてくるのかな?と再読したい気持ちになりました。