「ききみみずきん」「うりこひめとあまんじゃく」の二つの昔話が入っています。
“ずきん”って単独ではほとんど死語になっていますが、“怪傑黒頭巾”とか“赤ずきんちゃん”とか別の単語と連結して固有名詞に使われると、俄然輝きだす不思議な言葉です。この“ききみみずきん”も素晴らしい名称です。
おとうさんの形見のずきんをかぶり、鳥や木の言葉を聞くことができるようになった藤六は、見事に長者の娘の病気を治し、さらに村にも幸せをもたらします。
これは、もしかしたら、自然の声に耳を傾けることで、上手に暮らしていくという、自然と人との共生の物語なのかもしれません。
初山滋さんの絵は、淡い色彩のユラユラした感じの絵で、昔話の泥臭さはないのですが、とてもお話に合っています。
ただ、最後のおかあさんだけ妙にリアルに描いてあるので、私は小さい頃なんだか怖かったことを覚えています。
「うりこひめとあまんじゃく」も楽しいお話ですが、うりこひめは大五郎カットですし、あまんじゃくは、雨だれ風の頭をした影のような姿なので、ちょっと普通のお姫様物語とは様子が違っています。
結局あまんじゃくってなんだったんでしょう。精霊なのか山の神の家来みたいなものなのか、ちょっと不思議な物語です。