題名が気になって手にとりました。
魔法でお酢のつぼに閉じ込められるお話かと予想したのですが、
「おすのつぼ」は、元々ホップの乾燥所だった、お酢の壺に似ている形の「家」でした!
小さな家で、猫のモルトとつましい暮らしをしていたおばあさん。
ある日、逃がしてあげた小さなさかなが実は「王」で
「のぞみをすべてかなえてあげましょう」と言われて・・・。
おばあさんが、どんどん強欲になり、
小さな魚への言葉遣いが横柄になっていく様子が、定番の展開ながらも妙にリアルで、引き込まれます。
優しく謙虚なおばあさんを思い出し
「あれはきのう・・・、つい、きのうのことです。」と嘆く、
魚の言葉が印象的でした。
欲張りすぎてせっかく得たものを失う、という昔話はよくありますが、
失ったおかげで、おばあさんが元の優しさを取り戻すことができたのが、このお話の嬉しいところ。
控えめなおばあさんの最後のお願いも微笑ましかったです。
揺るがない、猫のモルトの存在がいい味だしていて、
自分に与えられている、ささやかな幸せに思いを馳せつつ、読み終えました。
優しい雰囲気の絵も楽しく、先が気になるお話で
小1の次男も夢中・・・長いのですが、一気に読み聞かせました。
作者の家で語り継がれてきた昔話を元に本にした、というまえがきに納得。
小学生のお子さんにおすすめの作品です。