祖父の死後、みつかった一冊のノート。そこには自分の死について、準備するものや、死後の世界の暮し方などが書かれていた。
孫はそのノートを読んで…
「死」を扱った作品は、重い、悲しい、心が痛い…などの心理的な抵抗が強いので、あまり好きではない。しかし、この絵本は、現実の社会でリアルに起こりうる家族の死を扱っているのに、クスリと笑える場所がいくつもある。ペットの死や家族の死に直面することが現代の子どもたちにはどのくらい機会があるのか知らないが、自分の子ども時代はしょっちゅう近所の老人が死に、道端で車に引かれた小動物の死体を見た。高齢化した田舎で過ごした幼少期に、貴重な体験をしたのだと今は思う。
簡単な漫画のような絵の中に、たくさん考えられたリアルな日常がちりばめられている。大人になっても遊び心を忘れない、洒脱な老人のいろんなアイデアと、厳しい現実とのコントラストが見事な一冊。祖父母のほうが子どもみたいで、子どもの方が大人びているように思われた。
「このあとどうしちゃおう ノート」は、いわばエンディングノートの一種だ。しかし、そこには遺産相続でもめる親族の様子や、死に切れない執着心などがない。唯一、嫌いなあいつは地獄で苦しんでいる様子を想像してざまーみろ、とほくそ笑む老人の姿があるものの、それもユーモアに満ちた責め苦である。
人間がもし、善意が8割くらいで暮せたらなら、こういう終わり方ができるのではないだろうか。
年々、死が間近に迫ってくると感じる私たち中高年にも、心に響くものがある名作絵本だ。