作者の今村葦子さんが熊本のご出身ということで、熊本支援のチャリティーブックトークの1冊として手に取ったのがきっかけです。
以前より酒井駒子さんの絵の大ファンであったことから、発売を心待ちにしていました。
詳しい内容はネタバレになるので割愛しますが、今村さんのテキストは、読点の位置まで熟考されていて、声にだして読むと、子どもが話しかけてくるあの独特のリズムがよく再現されていると思いました。
また、酒井さんの描く子どもや動物の愛らしさは、まさに「酒井駒子ワールド」という感じで、物語の世界観にもしっかりマッチしていました。
タイトルの「なきむしこぞう」は「ぞうのぬいぐるみ」=「じょう」であり、ぬいぐるみの持ち主である「あの子」であります。
思い思いに自分を投影させて物語の世界に入ることができるところが、この作品の懐の深さであり、ゆたかさであると思いました。
テキストの感じから、自分で内容を咀嚼して物語の世界に浸ることができるのは小学校2、3年生くらいからかな、という印象を持ちました。
絵本寄りの児童文学、といった立ち位置で、絵本から児童文学への過渡期を迎える時期の子どもたちに特におすすめです。両方に触れることが出来る子ども時代の時期にこんな上質な作品に出会えた子どもたちは、きっとこののち上手に本とつきあっていくオトナになれるのではと思います。
前述のブックトークではターゲットの子どもたちよりその保護者さんの反応が大きかったので、大人向けの1冊といえるかもしれません。