柳田国男の『遠野物語』の絵本シリーズの一冊。
文は京極夏彦さん、絵は近藤薫美子さん。
作品によって絵の担当が変わるのだが、それぞれ画家の個性が作品の雰囲気を変え、それはそれで面白い。
この本にしても、白を基調にしたデッサンで怪しい雰囲気を醸し出している表紙をみても、「遠野あたりの山では、不思議なことがよく起きる」のも納得がいく。
さて、タイトルの「まよいが」であるが、私は最初「迷い蛾」みたいなものを思っていた。白い表紙が蛾の銀粉のようにも感じたせいでもある。
ところが、これは「迷い家」という漢字をあてるらしい。
昔、一人の女房が山に迷い込んで、不思議な館に入り込む。
「どこにあるのか、どうやって行き着けるのか」誰も判らないが、「迷い家は、訪れた人に幸運を授けて」くれるらしい。
この本ではその「迷い家」に入り込みながら何もとらずに村に帰った女房が、川の上流から流れてきた朱塗りの椀を拾い上げると、これがまた不思議なことにいくらでも米を生み出したという。
こういう欲のない人が、欲がないゆえにお金持ちになるという話はたくさんある。
この話もそういう話の一つだが、それが「家」という建物が生み出すというところにこの話の不思議さと怖さがあるあるような気がする。
そういえば、昔家が人間を飲み込んでしまうといったホラー映画があったと思うが、これもそういう類の怖さがある。