宮沢賢治の人生とこの本を重ねると皮肉である。彼は望んで教師になる。しかしすぐに辞めて実業の世界に出るが旨く行かず結核になる。私なら教師をしながら創作に励むだろう。そうすれば長生きが出来て良い作品が書けたかもしれない。それは凡人の思いだろうか。
賢治は敢えて困難な道を歩んだ。健康を回復してからも肺に良い影響を与えるとは思えない砕石工場の技師となり現場にも出る無理がたたって死期を早めた。自ら死を望んでいるかのような行動である。
「雨ニモマケズ」は賢治の死後に発見されたメモだ。もしかすると遺書かも知れない。「雨ニモマケズ/風ニモマケズ」より始まり、「サウイフモノニ/ワタシハナリタイ」で終わる。漢字交じりのカタカナ書きである。対句のような表現が全編で用いられ、最後の文章になっても主語、即ち私は、誰なのかが分からない。賢治だろうか?それとも・・・生まれ変わった自身だろうか?