岩瀬成子という作家は知っていた。だが、心の中で敬遠する気持ちが働いてなかなか読めなかった。
読み始めてやはりというのか、落ち着かないざわざわした感じが心を占めてきた。
主人公の亜澄が母に一緒に死のうかと言われる書き出しからも覗える貧困家庭。一体この子はどうなってしまうのか?
大人は知っているのだろうか?子どもが実はとても大人を気遣って生きていることを。
大人は知っているのだろうか?子どもにも土足で踏み込まれたくない気持ちがあるということを。
大人は思い出すことがあるのだろうか?かつて自分が子どもだったということを。
読み終わった時、ケストナーの『飛ぶ教室』の書き出しを読み返していた。
次の日もう一度『マルの背中』を読み返してみた。そうして子どもの頃思っていたことを思い出した。大人になっても子どもの気持ちを忘れない大人になりたいと思っていたことを。
子どもにも子どもの悲しみがある。子どもにも子どもの心の世界がある。
読みながら私に問いkかけてきたのは、心の奥に住んでいる自分自身の子どもの心だったのかもしれない。
すごいなぁ、岩瀬成子。こういう作品書く人なんだと打ちのめされ、他の作品も読んでみたくなった。