外国の絵本を読む基準というか動機は訳者に左右されることが多い。
日本の著名な作家や詩人が翻訳をするケースがたくさんあるので、訳者名で読むことになる。
この絵本もそうだ。
元「暮しの手帖」の編集長で人気エッセイストでもある松浦弥太郎さんが翻訳をされたということで手にした。
これが思いのほか、よかった。
書いたのはポルトガル生まれのカタリーナ・ソブレルさん。
1985年生まれというからまだ若い。
若いけれど、人生の終盤期を迎えた「おじいちゃん」を見る目は確かだ。もしかしたら、この絵本の「ぼく」は著者自身なのだろうか。
このおじいちゃんは時計職人だが、今は時計も見ないし、時間も気にしない。新聞さえ読まなくなった。
おじいちゃんには予定もない。やりたいことや好きなことをしているだけ。
誰もがそんな生活を夢みているはずだが、誰もが「おじいちゃん」になりきれない。
おそらく「おじいちゃん」というのは年齢のことではない。
ここで書かれている「おじいちゃん」は豊かに生きているという意味だろう。
本読みのプロでもある松浦弥太郎さんならこの絵本の良さに気がついただろうし、ここに描かれている「おじいちゃん」の生活こそ松浦弥太郎的ともいえる。
この作品は2014年にボローニャ国際児童図書展で国際イラストレーション賞を受賞してくらいなので、絵にもまたいい。