たまたま手にした、一冊の本との出合いに驚かされることがある。
あるいは、それは一篇の詩の時もあるし、ひとつの短い小説の場合だってあるだろう。
「詩の絵本 教科書にでてくる詩人たち」のシリーズとして、谷川俊太郎さんの、絵は山口マオさんの、この絵本を読もうと思った きっかけは、それが谷川俊太郎さんの詩であったからでした。
だから、私にはこの「だいち」というタイトルの詩のことは知りませんでした。
読んでみて、そしてそれは2011年3月11日に起こった東日本大震災からもうすぐ8年になる春が間近になったある日でしたが、この詩から8年前のあの日のことを思い出していました。
あの日、大きな「だいち」の揺れでたくさんの人たちが犠牲になられた。
この詩にあるように、「だいちのうえに たねをまき/だいちのうえに いえをたて」たたくさんの人たちが、死んでいったのです。
この詩は元々1987年に刊行された『いち』という詩集に掲載された詩だそうですから、東日本大震災も阪神大震災も想像もされていない時期に書かれたものです。
それでいて、強くあの日のことが想起されるのは、詩人の嗅覚のようなものだったのでしょうか。
そして、この詩は東日本大震災のあと2年生の子どもたちに読んであげた小学校の先生がいたことが、この絵本の巻末に紹介されています。
そして、解説を書いた宮川健郎さんは「詩には、私たちにふだんの見なれた風景を見直させる力がある」と綴っています。
とても、考えさせられた詩の絵本との出合いでした。