アステカ時代のメキシコの昔話だそうです。
みすぼらしいちっぽけな体故毎日いじめられているうさぎが、神様に体を「大きくしてください」と懇願します。
神様はしばし考え込んだ後に、なんとも難しい課題をうさぎに与えます。
強いとら・惨いわに・知恵あるさるを自分の手で殺して、その皮を持ってきたら願いを叶えてやろう、というのです。
洋の東西を問わず、昔話の中にはこのような残虐的な行為が淡々と記されている作品が多々ありますね。
大人は、具体的イメージを描き過ぎドキリとしますが、子どもはさらりと聞いています。
この三つの難題を一つずつクリアして行くうさぎの目つきが、段々常軌を逸し鋭く変わっていくのも大人にとっては不気味です。
知略をめぐらし手に入れた皮を三枚担いで、神様の前へ差し出したうさぎですが、・・・。
読後「そんな〜!」という息子の一言。
「神様は約束を反故にしてもよいのか」、という問に「神様との約束などあり得ません。神様と神様に造られたものは対等ではないのだから」
しかしながら、神様はうさぎの仕業にギョッとしたのかも。
自分の造ったものが、自分の予想以上のとんでもない能力を持っていたことに。
「え〜、でもうさぎ可愛そう〜」の一言に、「仮に神様が、こんなことをしでかすうさぎに誰よりも大きい体を与えたら、この世の中の生き物の世界のバランスは間違いなく崩れるでしょう」
あまり納得していない息子でしたが、最後に「うさぎをこれから見たら、うんとかわいがってやろう」
神に造られたものは全て造られた時点で、見事な神の采配で形作られたものなのだ、と思いました。
うさぎの耳が長くなったのは、とら・わに・さるの仲間たちの仕返しに合わぬよう、またほかの大きな獣に虐められぬよう、身の危険を早く察知できるようにとの神の情けとも読めました。