ヨーロッパの21人の高い身分の女性たちが愛したお菓子、開発したと言われるお菓子を、美しく重厚感のあるイラストとともに紹介するレシピ本。歴史の古いお菓子たちの誕生の背景と、それにまつわる貴族たちのドラマ。
歴史&お菓子レシピというユニークな構成と、筆者の少女時代からの憧れを加味した美しく夢の世界のような雰囲気の絵本。しかし、その美しく豪華で華やいだ雰囲気の、甘いお菓子の背景は厳しく残酷な歴史の流れの中に生きた人間のドラマがあった。
夫の関心を引くために、愛人との蜜月に、主人を慰めるために…たくさんのお菓子が登場している。貴婦人だけでなく、召使が開発したお菓子などお菓子の経歴は色とりどり。気高く上品な雰囲気で、今もなお人々に愛されるお菓子たちの影の部分も知ると、魅力が更に増す気がする。
現代に生きるお姫様として、著者が実際に会ったことのある人物も紹介され、歴史が今のこの時につながっている感じが素晴らしい。
美しいものは、どの時代にも好まれる。心が豊かに潤う一冊であり、思い立ったら実際に作って体験してみる事もできる。どの時代のお姫様よりも、実は現代の私たちの方が物質・情報的には圧倒的に豊かである。昔の貴族の雰囲気を庶民が楽しめるなどとは、当時の人は思いもよらなかったに違いない。