こぎつねを失った母ぎつね。
泣いて泣いて、喪失感で一杯のある日、遠くにぽつんと見える小さなあかり。
近づいてみると、電話ボックス。
ボックスの中に人間の男の子。
亡くなったわが子とオーバーラップし、目に映ります。
それから、毎夜電話ボックスにあかりがともるころ、
遠くで療養中の母親に電話をかけに来る男の子の様子をながめます。
ある夜、電話ボックスにあかりも無く、取り外されることを知った母ぎつねは……。
前半、可愛らしいこぎつねと母ぎつねの 幸せそうな様子に心があたたまります。
“子どもがうれしいと、親はうれしい”というフレーズが頭に残っていました。
男の子が母親と話す「かあさん、あいたいな……」の言葉を聞いた母ぎつねが、こぎつねに答えるように「ええ、かあさんもよ。」と心の中で囁くシーンが、泣けました。
電話ボックスに姿を変え、男の子と会話する所は何とも切なくて、我が息子は、神妙な顔で聞いていました。
男の子との出会いが、母ぎつねを癒し、再び生きる前向きさを取り戻していく終盤も素晴らしい。
母ぎつねが受話器を取り、こぎつねに話しかけるシーンは、希望が見えてきます。
最終ページも美しい終わり方だと思います。
涙涙で、絵がにじんで見えますが、優しい色使いと、霞がかかったような淡い(パステル?)画法は、このファンタジックなストーリーを引き立たせてくれています。
「泣かせられてしまった〜。」と息子は、ニコリ。
お子さんだけではなく、お母さんにお薦めしたい一冊です。