表紙は、夜の町の風景があるだけで、いっけん地味。
「ちいさなくれよん」という題とマッチしない表し表紙の絵に、いったいどんな話?という感じでした。
でも、この表紙の絵の中に、よく見ると、小さな黄色いくれよんがいるんですよ。
この黄色いくれよん、折れて短くなってしまい、くずかごに捨てられる。
「ぼく、まだかけますよ。まだ、きれいにぬれますよ。」と大きな声で呼んでみたけれど、誰も拾いにきてくれない。
そこで、ボクはまだまだ役に立つんだ!と1人で広い外の世界に旅に出るんですね。
まず最初に、芝生の上にあったぼうやの靴の消えそうになっていたひよこをきれいにぬってあげる。そして、門のそばにあった、古くて汚くなった黄色い自動車も。
それから、男の子にいったん拾われるんだけれど、やっぱり捨てられたくれよん。
捨てられた拍子にぶつかった小石に、きれいな色だといわれ、小石も黄色にぬってあげるんですね。
でもね、いろんなものを塗れば塗るほど、くれよんはどんどん小さくなっていく。
そして、日が暮れた後。夜空を見上げている時に、光のとっても弱いお星様を見つけるんですね。そして、お星様をぬってあげようと空にむかって飛んでいくんです。
人もそうですが、人だけに限らず、どんな小さな生き物にも、そして物にも、生まれてきた意味があり、使命があり、大切な命なんだよと...
「大事にしなさい。」「もったいない。」
ついついお小言になるけれど、口で言わなくても、この絵本を読むと、物を大切にしようって気持ち、自然に生まれるような気がします。
小さなくれよんの「まだ役に立てるんだ」という思い、「誰かの役に立ちたい」という暖かい気持ちが、ほんのり後に残るような、よい絵本です。