画家いわさきちひろさんの生誕100年を記念して刊行された絵本です。
いわさきちひろさんは1918年12月に生まれ、1974年8月8日に55歳という若さで亡くなっています。
いわさきちひろという名前を聞いただけで、誰もが頭に描くのは、やさしくて可愛らしくてほっこりした女の子ではないでしょうか。
いわさきちひろの前にいわさきちひろなく、その後にもいない。まさに独特の世界観があります。
生前からいわさきさんの絵は多くのファンがいましたが、没後黒柳徹子さんの大ベストセラー『窓ぎわのトットちゃん』の表紙を飾ったのがいわさきさんの絵で、1981年のことでした。
黒柳さんをモデルにした絵ではなかったはずですが、トットちゃんの世界観といわさきさんの絵が見事にマッチした表紙画になりました。
『窓ぎわのトットちゃん』があんなにも読まれたのは、いわさきさんの絵の魅力も大いに貢献したのではないでしょうか。
そんないわさきさんのたくさんの作品の中から正面を向いた、すなわち読者の方にじっと目を向けた女の子たちの絵に、谷川俊太郎さんが詩をつけたのが、この絵本です。
いわさきさんの絵の女の子たちは何も話はしないけれど、とても多くのことを語りかけているような感じがします。
それを谷川さんが詩人の感性で言葉にしたのだと思います。
「なまえをつけて」、それは絵のなかの女の子たちの、つぶやきのように聞こえます。
名前をつけたら、もう女の子はどこへもいかない。
そんな妖しい気持ちにさせる絵本でもあります。