広島原爆のお話ですが、爆心地から離れた場所にある楠が見た風景はなんとも繊細で美しいお話でした。
親とはぐれた子どもを、お母さん変わりにだっこして子守唄を歌ってあげる女子学生。
二人ともお母さんを思いながら、死んでいきます。
ただそれだけと言ってしまえばこの話はあっさりとしているのですが、なんで奥深いのでしょう。
作者の大野さんの体験を通して書かれたから?
原爆というと残酷な描写に身構えてしまう私たちに、緊張する前の心にすっと入りこんでしまったから?
女子学生の姿が切ないから?
……?
全部正解でしょう。
原爆の悲惨は爆心地だけではないのです。
私は、このお話とともに山中冬児さんの透明感のある絵にも感動しました。
長崎源之助さんと一緒の作品が多い山中さん。
その長崎さんも原爆の語り部でした。