歳を重ねるごとに増えていく思い出の風船。特に、おじいちゃんの思い出話はどれもキラキラしていて、なんて素敵なお話なんだろう、歳を取るって案外悪くないなぁと、ほんわかした気持ちで読んでいました。
でも、そんなおじいちゃんが風船を一つ一つ手放し始めた時、この本はもっと深い所まで描くのだと悟りハッとしました。
あんなに輝いていた大切な思い出が、指からすり抜けていき、本人はそれにまるで気づいていない。
周りの家族は、なす術もなくそれを眺める事しか出来ない。
私自身はまだその思いを体験した事はありませんが、少年が抱える悲しみや、腹立たしさが痛いほど伝わってきました。
でも、負の感情だけでは終わらないのが、この本の素晴らしいところ。
読み終えた後には、やっぱり温かい気持ちで本を閉じる事が出来ます。
いつか、その日がやってきたら。もう一度この本を開いてみたいです。