猫の第六事務所で働く猫達のお話です。
語り口は軽妙ですが、権力への憧れとかへつらいとか、毛色の違うものに対する陰湿ないじめなどが描かれています。
ただ、文章が切羽詰っていないので、そんなに重くなっていませんし、とぼけた雰囲気が全体を覆っています。
また、黒井健さんのほんわかとした絵が、可愛らしささえ醸し出しています。このお話には、この絵しか考えられないと思えるほどです。
すいすいと読めるお話ですが、出てくる言葉が古かったり、ちょっと耳慣れないものだったりするので、高学年の方が合うかもしれません。
それにしても、この猫の第六事務所って、役所を作るためにわざわざ存在したかのような陳腐な仕事をしているのです。深読みすれば、今の役所の体制と似ているかも。
もちろん、賢治はそんなこと考えて書いたわけではないのでしょうけれど。