墨に色を足して描かれた絵が、ちょっと渋い印象を抱く日本の昔話絵本である。
「はかまだれ」などと、ずいぶん聞きなれない言葉であるが、昔の大泥棒の名前だそうです。
その悪行を重ね、今や落ちぶれた感のある大泥棒が、母親の深い愛情に心打たれ、とうとう改心するという、実に実のあるお話です。
調子にのって悪いことばかりしていても、歳をとれば幸福とは縁遠い、惨めな生活。人に追われて生きるということが、幸福なはずなどないのである。
しかも、年老いた母親は、息子の悪行に心を痛め、世間に顔向けができなくなり尼となっていた。
そして修行を重ねた甲斐があって石に姿を変えたというのだ。
誰が好き好んで、石になどなりたいことだろう。息子の悪行に恥ずかしくなって、石になりたいと思った母の気持ちを思う時、はかまだれもすっかり心を入れ替えて、自ら番所へ名乗り出ることにしたのである。
最後に、親子の姿が描かれているのだが、なんとも心にぐっとくるその絵を見たら、母を悲しませるような、悪いことなど自分は決してするものかと思うのであります。
母の愛は、強し。