小さい頃、石井桃子さんの訳の『スザンナのお人形/ビロードうさぎ』を読みました。
「ビロードうさぎ」は、この本と同じお話ですが、感動的というより、なんとなく物悲しい印象がありました。
病気のぼうやを励まし続けたうさぎを待ち受けていた宣告に対して、物凄くショックを受けてしまい、最後のもう一つの逆転をもってしても、そのショックを拭い去ることができなかったように思います。
大人になって、大判で、「ビロードうさぎ」だけで一冊になったこの絵本を読むと、(筋を知っていたこともありますが、)過酷な宣告よりも、その後の転生の方に目がいって、救いを感じることができました。
ただ、もしかすると、本物のうさぎになるより、ぼうやのおもちゃであり続ける方が幸せなのかもしれないかな、とちょっぴり思ってしまいました。
大事なのは、ぼうやとぬいぐるみのうさぎとのつながりが親密で深いことであって、本物のうさぎになるかどうかは特別重要なことではないという気がします。
結末はどうあれ、酒井駒子さんの絵が素晴らしい、読み応えのある絵本です。