萩尾望都さんの「半神」「イグアナの娘」「霧笛」など、怖い位に美しく、繊細な心理が描かれた漫画の作品が好きで、
どんな童話を創られたのかと、ドキドキしながら手にとりました。
ある秋の夜。
墨色のウサギのような、クマのような姿のおばけが
トリッポンという名前の男の子を池に誘いに来ます。
「星つりにいこうよ」
ボートには子猫のミミィも乗り込んできて・・・
何気ない日常のように始まる、ふたり?と1匹の不思議で小さな冒険。
澄んだ言葉を紡いだ文章は、大人っぽい言い回しもありますが、
こみねゆらさんのファンタジックな絵の力もあり
年長の息子も物語の世界に夢中になりました。
「花で星がつれるなんて知らなかったよ」と呟き、
「よし、キスゲか」など、すぐにでも星つりに行きたそうにソワソワ。
ここ数日、毎晩「これ読んで」とリスエストされています。
私が印象的だったのは、トリッポンが星を触ったとき「ゆびさきがひえびえした」という箇所。
星って雪の結晶みたいな感触かなと思っていたので、やっぱり!と秘かに嬉しくて。
けれどその後おばけに、星が火を通して食べられると教わり、
じゃぁ・・・と、また想像が広がりました。
ラストは、その夜トリッポンが見た、幸せな夢の世界。
酔いしれて本を閉じると、気持ちが瑞々しく潤ったような気さえします。
年長さん位からのお子さんだけでなく、大人の方にもおすすめです。