ある日、おかしなはがきを受け取った一郎。
彼は山猫裁判に召集されたのです。
そこではたくさんの金のどんぐりたちが
誰が一番かで揉めているのでした。
文字だけでもドキドキワクワクの宮沢賢治の童話、
それに田島征三さんの力強いタッチの絵がつきました。
流れるような草木やワーっと集まるどんぐり、
山猫のその口!
見ているとその勢いにすいこまれそうになります。
独特の絵とお話に魅了されました。
気になるのは、どこもかしこも不思議な中で
どこか生真面目に扱われる、召集はがきの描写。
一郎がそれに関して最後にちょっと後悔もしているため、
切ない余韻としても残ります。
メールでやりとりしてばかりの今、
彼らが文章や文字の扱いで、一喜一憂したりする様子が
興味深く、愛おしいですね。
シンデレラのように
魔法の時間はフッと終ってしまいます。
馬車が一郎の家についたら、
山猫らは消えてしまい、金のどんぐりも茶色に。
秋には必ずどんぐり収集家、
そんな娘は特に残念そうでした。
そして、
「金色だったのは光のせいだったんじゃない?」と。
そうだね、山猫らがいたのは、
眩い光の指す、特別な場所だったのかも。
最後のページ、
ますの中のどんぐりを覗き込む一郎を見て
それが輝いていた時間を一緒に想ってしまいました。
子どもの大好きなどんぐりや猫がでて、
絵にも強烈なインパクトがあるので
低年齢からでも読ませやすいと思います。
秋を感じながら読むのにぴったり。
親子で楽しめる、ユニークな絵本です☆