この作品は、トム・ハンクスの主演で映画化された『ポーラー・エクスプレス』の原作。
クリス・ヴァン・オールズバーグの作品では、『ジュマンジ』『ザスーラ』と3つが映画になっています。
大人になった僕の回顧録という形式で、サンタの存在を信じていた僕が、クリスマス・イブの夜中に寝ないでサンタの登場を待っているシーンから始まります。
そして、家の前に現れたのは、急行「北極号」
とても幻想的な北極点の町への旅が始まります。
まさに、オールズバーグのパステル画が、クリスマスの様々なシーンと見事に溶け合っていて、見るものの心を虜にすることでしょう。
何と言っても、僕が欲しがったプレゼントが、サンタの橇についた銀の鈴だったことに感銘を受けました。
だって、サンタと過ごした証が欲しかったのですから。
小学校1年の次男は、僕が鈴をしまったローブのポケットに穴があいていて、鈴が無くなってしまうシーンで、口をあけて驚いていました。
それくらい、引き込まれてしまうお話なのだと思います。
最後の頁は、何度読みかえしても心に響く文章です。
村上 春樹さんならではの素晴らしい訳だと思います。
『以前は僕の友達はだいたいみんなその鈴の音を聞くことができた。
でも年月が経ってしまって、もうその音は誰の耳にも届かない。
サラはある年のクリスマスにそれを振ってみたが、彼女にさえその美しい音は聞こえなかった。
僕はもうすっかり大人になってしまったけれど、鈴の音はまだ聞こえる。
本当に信じていれば、それはちゃんと聞こえるんだよ。』
珠玉の一冊と呼ぶに相応しい1986年コルデコット賞受賞作品です。
クリスマスに是非読み聞かせして下さい。