誰もが知っている名作なので、絵本もいくつかありますが、挿絵画家が異なると、これほど絵から受ける印象が違うのかと思えるほど、それぞれの絵本でイメージがかなり違います。小さい子ども向けのものは、とてもかわいらしい「ごん」ですが、黒井さんの絵は、しっとりと描かれていて大人向きで、すらりとしたキツネの姿にほれぼれします。
あえて色調を押さえた絵は、物語の挿絵であると同時に、登場人物それぞれの心象画のようでもあり、思わず絵に見入ってしまうほどです。
お話は悲しい結末ですが、秋の夜長に手にとって、読後の余韻を楽しみたい、そんな1冊です。