旅するカメレオンが作るかき氷は、色鮮やかでおいしいだけでなく、動物たちの困り事も解消してしまいます。それぞれのかき氷をイメージした風景がページいっぱいに描かれていて、私も一緒にかき氷を食べながら小旅行している気分になりました。
みんなの悩みを解決するかき氷やさん。しかし、いろいろな色に染まり、風景に溶け込むカメレオンは、自分自身が本当は何いろなのか分からなくなります。明るく楽しげな場面から一転、カメレオンの悩みが、色味を抑えた寒い冬の場面で描かれます。
「あなたを色にたとえるとしたら、なに色ですか。」
これは私が学生時代、就職活動をしていたときに受けた質問です。自分自身がどんな人間なのかをわかっていなければ、この質問には答えられません。でも、本当の自分って何でしょうか。答えはなかなか見つかりません。当時、うまくいかない就職活動への焦りもあり、考えれば考えるほど自分を見失ってしまいそうでした。透明な氷と対話するカメレオンに、その頃の自分を重ねて読みました。
絵本の最後でカメレオンは、何いろにでもなれるのは強みであるということに気づきます。どんな色になったとしても、それも全部含めて「自分」なのだと思います。同じ悩みを持つ人に「大丈夫」と言ってくれているようでした。できることなら、このメッセージを過去に苦しんでいた自分に伝えたいと、心から思いました。
もしも将来、子供が同じようなことで悩んでいたら、この絵本を贈りたいです。そして、どんな色のあなたでもいい、そのままでいいんだよと、伝えてあげたいです。