文章がひとつもない絵本。
絵だけで、物語が進む。
父の傘を持って、駅まで迎えに行く小さな女の子。赤い傘をさして雨の中、町を通り抜けていく。途中にいろいろな見るべきものや、心がときめくものがあり、意外と長い道のりに…
「字のない絵本」を初めて読んだが、しっかりした絵の構図や印象的な色使いで、話や登場人物の気持ちなどが自然に伝わってきた。むしろ台詞や情景描写などがあると、邪魔になるかもしれない。
読者は自分の空想のなかで、女の子の気持ちや台詞などを、自由に想像して楽しむ余地がある。読者参加型の絵本、読者が読んで初めて完成する絵本とも言える。
迫力のある画面は、しっかりとしたデザインの基礎に支えられている。視点がいろいろに変わるので、シンプルな話なのに見ていて飽きない。素敵でお洒落な絵本である。
70年代のファッションや、ちょっと懐かしいような町の風景が楽しめた。大人世代が読んだら、自分の中にあるいろんな思い出がよみがえり、作者が意図したのとは別の新しい物語ができそうだ。