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なおみ」 夏の雨さんの声

なおみ 作:谷川 俊太郎
写真:沢渡 朔
出版社:福音館書店
税込価格:\990
発行日:2007年10月
ISBN:9784834022971
評価スコア 3.77
評価ランキング 46,271
みんなの声 総数 12
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  •  子どもの頃読んだ漫画雑誌に「日本の怪奇現象」みたいな読み物がよく特集されていた。
     その中のひとつに「髪の毛が伸びる人形」という記事があったのを、この絵本を見て思い出した。
     あれはどこかのお寺に奉納されていた人形ではなかったか。
     あれから何十年も経っているから、もしいまだに伸びているとすれば、すごい。
     あの記事が本当の話なのかわからないが、子ども心になんとなくありそうだと思っていた。
     それは、人形の力だろう。
     人の魂によりそうような力が人形にはある。

     その時の記事の人形も、この絵本の人形のような市松人形だったように思う。
     それにしても、怖い絵本だ。
     詩人の谷川俊太郎さんが文を書き、写真家の沢渡朔(はじめ)さんが写真を担当している。
     沢渡さんといえば、『少女アリス』で人気を博した写真家だ。
     写真といえば、その技術がこの国に入ってきた時、被写体の人の魂をとるとか、三人並ぶと真ん中の人が先に死ぬとかよく言われたものだ。
     昭和30年生まれの私でさえ、そんな迷信を耳にしたことがある。

     この作品でいえば、逆に写真が人形に魂を吹き込んでいるかのよう。
     窓辺に佇む市松人形、彼女の名前が「なおみ」、はまるで生きているようだ。
     本物の少女(モデルは石岡祥子)と二人で本を読んでいる場面など、息をしているのがどちらかわからない。
     まだ初潮すら迎えていない少女と「なおみ」。
     けれど、少女は確実に成長する。
     しかし、「なおみ」はいつまでも「なおみ」のままだ。
     「なおみ なおみ/わたしは むっつ/なおみ なおみ/あなたは いくつ?」
     やがて、少女は口をきかない「なおみ」を遠ざけることになる。
     箱に静かに横たわる「なおみ」。
     目は開いたまま。
     「なおみ」はこうして時間の奥へ追いやられていく。
     「なおみ」もまたいつか読んだ怪奇記事の人形のように、いつまでも髪の毛が伸び続けたのだろうか。

     怖い絵本である。

    投稿日:2014/10/19

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