韓国の絵本作家で、自称人形いたずら作家のペク・ヒナさんの作品は韓国だけでなく、日本でも人気が高い。
すでに『天女銭湯』とか『天女かあさん』とか『ぼくは犬や』などの絵本が日本でも出版されている。いずれも訳は長谷川義史さんで、長谷川さんの大阪弁の訳文が絵本の画調によく合っている。
そのペク・ヒナさんの(訳はもちろん長谷川義史さん)の新しい絵本が2021年6月に日本で出版された。
でも? あれ? なんだか、ちょっと雰囲気が違う。
人形いたずら作家のはずが、人形があまり出てこない。
どうなっているの?
ペク・ヒナさん、もしかしてスランプ? と、つい心配して、奥付を見ると、韓国での出版が2010年になっているではないか。
そうなのです、この作品はペク・ヒナさんの作品経歴でいえば『天女銭湯』より2年も前の作品なのです。
つまり、人形いたずら作家が誕生する前史の作品といえます。
もちろん、熱帯夜の暑さで月が溶けてしまって、そのしずくでシャーベットをこしらえるといった奇想天外なストーリー展開はすでにこの頃からあったし、写真を使った画作りもここではまだ実験途上ともいえますが、おそらくペク・ヒナさんの中では、新しい絵本作りが生まれつつあったのではないでしょうか。
溶けてしまって住むところがなくなったと登場するのが、月のうさぎ。
韓国でも月にはうさぎがいて、お餅をついていると、そんな話があるのだろうか。