『ラプンツェル』(BL出版)でこの作家さんを知り、『レイチェルのバラ』(西村書店)で、植物を優しい表現で描かれる方だなと思っていました。
きっと植物への愛情の深い方なのでしょうね。
この作品の読後、最初に私が思った事は、あちらの農場の広大さです。
日本の農地の平均的な広さを念頭において、この作品を読んでもペーターの孤独の深さがあまり伝わらないのじゃないかしら、と。
地平線の先にまだまだ続く小麦畑の真ん中にポツンと立っている案山子のペーター。
刈り入れ時までは、この農地の持ち主の子どもたちが、洋服に装飾を施してくれたり、話しかけてくれ、彼のそばで遊びまわり、ペーターも嬉しかったことでしょう。
10月に入り、冷たい雨が降り、寒い日が・・・。
動けないペーターにとって、お百姓の家の様子を、ほかの動物たちから聞くより術がなかったのは淋しかったことでしょう。
辛い季節を乗り越えた後、ペーターに訪れた幸運に、読んでいて気持ちがあたたかくなります。
案山子にも心があるということを通し、どんなものにも心を掛ける優しさを学べる作品だと思いました。