この絵本は、1995年の阪神淡路大震災から3年経った1998年に復興支援のために開かれた「1000人のチェロ・コンサート」を題材にしたものです。
チェロの教室に通うぼく。そこで、ぼくは、神戸からきた女の子と出会います。2人は、ある日、大震災復興支援のチェロコンサートのことを知り、自分達もその練習に加わるのです。そこで知り合ったおじいさんとの交流もはじまります。おじいさんも神戸からきたのでした。
そんなにひとりでがんばって、おとをださなくてもいいんだよ。
みんなのおとをきいて、きもちがひとつになるように、かんじながらひくんだ。
この部分を読んで、涙が出てきました。これは演奏の方法だけでなく、生き方そのものについての言葉。
それぞれの喪失体験が演奏することで、少しずつ癒される。
音楽には、人の心を揺さぶる大きな力があると思っています。
特にチェロという体で包み込むようにして演奏する楽器は、大切なものを抱きしめているような感じになるのだろうと思います。
抱きしめながらも、他の人の演奏する音に抱きしめられる…
そして、それが1つの曲になっている。この本を読みながら、そういうイメージを持ちました。
阪神大震災のとき、私は、妊娠8ヶ月の終わり頃でした。たくさんの命が失われる中で、産まれてくる命もある。その命を大切にしなければと思ったのでした。
いせひでこさんの絵は、とても透明感があって、優しい雰囲気を醸し出しています。
子どもだけでなく、大人にもお勧めできる絵本だと思います。