同時期に岸田衿子さんが文章を書かれた「スガンさんのやぎ」と、この本を読み比べすることになってしまいました。
読後感が全く違うことが驚きです。
詩人グランゴァールに向けた寓話であることと、エリック・バテューの心を突き刺すような絵のタッチで、この物語は恣意的な度合いを増しています。
スガンさんの設けた安全対策を蹴ってまで、自由になることを選んだやぎは、オオカミに必死に闘いを挑みます。
それはあたかも負けることを悟っていながらの死闘であって、生き抜くための闘いではなかったのです。
しかも、やぎが食べられるシーンまで描いているのは何故でしょうか。
その強烈なメッセージを、突きつけられたグランゴァールは何を思うのか、興味あるところです。