そらに まあるい ふしぎな 月が のぼりました。
この文章から始まるこの絵本は、幻想的で幸せそうです。
月に照らされた虫たちは妖精になり、種はグングン育って花になり、魚たちは夜空で泳ぎ、眠っていた赤ちゃんたちは空を飛び回ります。
それらのページでは心が満たされ、全ての生き物が幸せであるように感じます。
けれど。
戦場の風景が目に飛び込んできたとき、ハッと気づくのです。
全ての生き物が幸せであるわけではないのだと。
それを踏まえたうえで、絵本は次のように締めくくります。
かけては みちる、 月よ 月。
ずっと そこから てらしておくれ。
このよが やみに しずまぬように。
わたしが やみに のまれぬように。
月よ、 月。
ふしぎな月。
全ての生き物が幸せであるわけではないことは、分かっています。
けれど、幸せであるよう願わずにはいられないのです。
だからあなたも、どうか幸せでいてください。
この絵本を手掛けた富安陽子さんと吉田尚令さんは、そう言いたかったのではないかと思いました。