皮膚感覚で喜びたい本、ある年齢までに会っておきたい本というのは確実にある。子どものころ、周囲にほとんど絵本がなかったため、ぐりとぐらに出逢ったのが10歳を過ぎてからだったことは実に残念でならない。
というわけでシリーズ3作め『ぐりとぐらのかいすいよく』。
海岸でビンに入った手紙を発見したぐりとぐら、発信者うみぼうずの招聘に応えて宝物奪還の任につく。おお、あらすじにするとなんだか夏休み冒険映画だ!
私は自分が小学校高学年でこの本と出会ってから(今考えるとほぼリアルタイム)息子に読んでやるまでの長い間、この本を読むのはいま一つ気分がのらなかったものだが、そうか、これってやっぱり子どものツボを押さえているのか。
岩場の秘密基地で岩のすき間にピカピカする石を落っことしてしまった男の子が、野ねずみにそれを回収してもらい、お礼に得意の泳ぎを教えるという筋立ては、夏休みに田舎で出会う地元っ子と旅行者の友情ものとしても読めるわけだな。
読んでやってちょっとおもしろいのは、小さい子はぐりぐらにすっかり同化していることもあって、うみぼうずを半分子ども半分精霊みたいに感じている一方で(夏休みに泳ぎを教えてくれるイトコのお兄ちゃんってヒーローに見えたよね)、もうちょっと大きい特に男の子は、逆にうみぼうずの立場から、自分の夏の冒険ごっこに小人ならぬぐりぐらにまぎれこんできてもらえたら楽しいだろうなあという気分になるということ。カバー年齢広いよ!
こういう発見があるから、読み聞かせはやめられないんだなと思う。自分ひとりで黙読していてはわからない世界。聞き手に呼吸を合わせることで、びっくりするくらい深い場所までもぐっていける不思議。
ちなみに5歳でこの本をたっぷり楽しんだ息子は4年生になってもぐりぐら目線で楽しんでいた。泳げないからか? そうなのか?