作者ロジャー・デュボアザンの描く、カラフルで生き生きとして可愛い動物たちが魅力の絵本です。
デュボアザンが亡くなる前に完成した最後の作品で、その名の通り花の好きな、心優しいワニのクロッカスの自分探しのようなお話です。
クロッカスは、花々のいい香りが漂う草むらで「ひがないちにち、しあわせなきもちでねむっていました。」そこへ犬のココがやってきて、、、。スイートピーさん夫妻の農場に暮らしている他の動物たちも、自分がいかに有能で役に立っているかを競い始めます。
クロッカスの良いところは、「すばらしい」「すてきだ」と相手の長所を素直にほめて感心するところなのですが、その度に自信を無くし、落ち込んでいってしまいます。
その姿についつい自分を重ねてしまう人は多いかもしれません。どうして私たちはいつも外に目をやり、何かと比べて一喜一憂したり、答えを外に求めたくなったりするのでしょうか。
外ではなく自分の内に、自分に本来備わっているものに気づいたとき、クロッカスは、水を得た魚のように伸び伸びと自由になれました。
そしてそのことで人の役に立てた時の喜びは、草むらの平和な眠りよりずっと格別だったでしょう。
「おれたちは、だれだって、じぶんしかできないことがあるんだ」と言うおんどりのトランペット。「おれはバーサみたいに、あんなにたかくはとべないが、バーサは、おれみたいにうたえない。」というセリフから、金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」が浮かんできました。