この絵本をはじめて読んだのは息子がまだ一ヶ月のときでした。全くどういう本か知らずに読み始めたので、最後の狐が恥ずかしそうに笑って死ぬシーンとお墓のシーンでは、もうひたすら号泣でした。息子は勿論唖然としていただけでしたが。それ以降もこの本を読むたびに涙をこらえるのに必死になります。そんな私を見て「お母さん、どうして泣いてるの?」と言う息子。ある日、この本を読んでいても、息子には可哀想とか悲しいとかそういった気持ちは全く湧いてこないのか、終に我慢できなくなって息子に聞いてみました。すると、「この本は好き。やさしい狐が色々な動物にご飯を食べさせてあげる話だから」との事。「でも狐さん死んじゃったよ。」と言ったら、「えっ?死んでないよ。寝てるだけだよ。後で起きるよ。」との事。漸く、息子が平然と聞いているだけだった原因が分かりました。
最後に読んだとき、初めて狐が死んだ事が分かったようですが、「狐はオオカミに負けて死んじゃったねえ。」と言っていたので、「負けてないよ。ちゃんと勝ったよ。ひよこたちを守る為に頑張って戦って、強いオオカミに勝ったけど、疲れて死んじゃったんだよ。」「そうなの?見せて!」
みせたら、「あっ、本当だ。勝ったね。狐、強いね。」
この経過で分かったのは、この本は小さい子にも十分楽しめる本ですが、ひよこの無垢な心、きつねの心境の移り変わりなど、この物語の深い部分を理解するまでには子供の成長が必要だということです。
子供は詳細を理解できなくても、この本が大好きです。なので、子供だけではなく、子供に本を読む大人たちにこそ、純粋な気持ちで読んで、涙を流して欲しい作品です。
私は個人的にこの狐が大好きです。出来れば死んで欲しくなかったけど、ひよことの出会いがなかったら、彼は自分の存在意義に気づくことも、充実した心の温まる日々を過ごすことも出来なかったと思います。出会いや信じる心って本当に大切だと改めて思います。