昔話で三度の失敗の後、願いがかなうというものがありますが、実際の生活の中で人間は三度の失敗どころではなく、何度も失敗するのではないかとこの頃思うようになりました。
骨身にしみるような相当手痛い、たとえば大切なものを失うような経験がないと強くなれないのではないだろうか。
この本を読み終わった時、そんなことを思いました。
四苦八苦は元々仏教の言葉だそうですが、人が味わう苦しみの中に、「生」もあります。つまり生まれてきたことですでに苦しみを味わうということになります。
苦しみが去った後にすぐにまた新しい苦しみが芽生える。
乗り越えられない試練はなくその人が乗り越えられる試練を神は与えるともいいます。
両親を事故で亡くした少年は祖父に引き取られます。
その祖父の愛の限りなく深いこと。無条件の愛というのがふさわしい愛。
どんなことをしても「いい子」だと言ってくれる人の存在は、祖父が亡くなってからでも生涯少年を支え続けることだと思います。
『ナゲキバト』という題名も深いものがありました。ラストが伝える深さに驚愕する共にまた考えさせられました。
分量的には、それほど多くないこの物語の中に、流れる一つ一つの言葉の重み、人生哲学、宗教観といったものに圧倒されつつも深い感動を覚えます。
すごい物語に出会ってしまいました。そしてこれが児童書であるということ。そこにまた驚きました。
私は読んだ小説のお気に入りの箇所には付箋を貼りますが、この本はそれこそ付箋だらけ、読み返してまた考えたい言葉がそれほどたくさんありました。