人間が生まれるよりずっとずっとずっと前、地球上に1匹のイグアノドンがいました。聞こえてくるのは山の噴火の音ばかり、誰の声もしません。一人ぼっちのイグアノドンの耳に、ある日「だくちる だくちる」という音が聞こえてきます。それはどこからか飛んできたプテロダクチルスの鳴く声でした。
「やかましいけどさびしかった」イグアノドンの気持ちは、現代の私たちとどこか共通するようにも思われ、また、イグアノドンがプテロダクチルスの声を聞くだけでうれしくなる、その感性はみずみずしく、時代が豊かになった分、今を生きる私たちはどこかに大事なことを忘れてきたのかもしれないなーと、しばし考えさせられました。長新太さんの絵が、動と静の世界を巧みに表現しています。行間をかみしめながら、余韻を楽しみながら、じっくりと味わいたい本です。