上の子に、はじめて読み聞かせたときに、非常に懐かしい感じがしました。
調べてみたら、初版が1971年で、私が小学生の時に読んだことがある絵本でした。
子どもに絵本を読みきかせていると、本とのこうした再会があるのが一つの楽しみです。
自分が楽しく読んだことを思い出す絵本を、大人になって子どもに読み聞かせている感慨。
この本は、縦スクロールの要素がある絵本です。
表紙の裏、そして裏表紙の裏には、本編で描かれている縦長の絵が、縮小されて描かれています。
これを是非、子どもと一緒に楽しんでください。
前半は、縦に伸びる大きな大きな木が、ページをめくるたびに上へ上へと描かれていきます。
木に縛り付けたハシゴを、かおると一緒になって上っていくような気持ちでに、ワクワクしながらページをめくっていきます。
木の天辺までいけば、身体のまわりを通り過ぎる心地好い風を感じるような気がします。
私は、子どものころ、こういう図解的な絵が大好きでした。
アリの巣の断面図とか、海賊の秘密基地の断面図とか。
絵本ではないですが、「宝島」の挿絵の島の地図なんかも、見ていると頭がグラグラしてくるくらい好きでしたね。
この絵本は、子どもが秘密基地や隠れ家に憧れる気持ちを描いた本だと思います。
私も小学生の頃、ドラム缶や土管を利用した秘密基地を友達と一緒に作ったり、藪の中の空間を秘密基地にして、そこにおもちゃなどを運び込んだ経験があります。
「ロビンソン・クルーソー」とか読んだりした影響で、ツリーハウス、本当に憧れました。
「トム・ソーヤの冒険」にも、ツリーハウスは出てきましたっけ?
主人公の「かおる」は、自分の想像力を広げて一本の大きな木を育て上げていくとともに、その木に作ったツリーハウスで四季を過ごす自分を想像します。
途中からは、四季の移り変わりが映画の場面展開のように描かれていて、ツリーハウスでの生活に夢が広がります。
読んでいると、かおるの想像している木が、本当にどこかにあるような気がしてきますね。
こうした想像や行動は、子どもの発達の観点から考察すれば、親からの自立への準備ということになるのでしょう。
私は、いまだに秘密基地を作って閉じ籠りたくなる時がありますけれどね。
子どもに読み聞かせながら思うのは、最後に出てくるお父さんの理解ある言葉の素晴らしさです。
物語的に、最後の絵で、将来への展望が開けつつ終わる。
それが、読み聞かせが終わった後にも、親子の会話を深める機会に繋がっていく。
最近、子どもと散歩していて、「あの木なら、木の上にお家が出来そうだね」とか話しながら、大きな木を見上げることが多いです。
水平から目線を少し上げて見てみると、東京の街の中にも、けっこう大きい木は残っていることに気がつきます。
残念ながら、かおるの木ほどの大きな木はまだ見つけていませんが、いつの日か、本物の大きな大きな木を見上げながら、その木にハシゴをかけて、ツリーハウスを作って、木の上で一緒に暮らす夢を、子どもと一緒に語り合ってみたいものです。
実は縦スクロール部分が意外と読みづらい絵本ではありますが、床に置いて読めば、子どもと一緒にワイワイ楽しめます。
子どもと一緒に、想像の翼を大きく広げられる、とても楽しい絵本です。