あれは、何年前のことでしょうか。書店で児童書を担当した時に、『もこもこもこ』を探しているのだがと若いパパさんに尋ねられました。児童書を担当して、まだ日が浅かった自分は、何のことやらと考えながら、検索機に向かおうとしたら、「えっ、もこもこもこを知らないのか!」とかなり驚かれました。私は、子育ての経験もなく、まわりというか近くに小さな子もいなかったのもので、突然、児童書担当といわれても少し面食らっていたところでした。まあ、見かけはしっかりおばさんでしたので、絵本は一通り知っているんだろうと他の人々は思ったようですが、ところがどっこいそうは問屋がおろしません。で、知りえた大切な一冊です。小さい子供達の目には、このもこもこがとても楽しく映るのだろうなとは思い、まだ字を読むことがおぼつかない年の子達の本を選ぶ時は、いつもこの一冊を思い出しています。そして、少し苦笑いをしながら、えっ、知らないのか!と驚いた若いパパさんの笑顔は、たぶん一生忘れられないと思います。