幻想的で心象風景のような絵の中で、少し怖い物語が展開します。
そのギャップに戸惑ってしまったのですが、作者が、幼い頃にホロコーストを経験して生還したユダヤ人であり、イスラエルに移り住んだ女性であるということで、今のイスラエルで起きていることに、妙な因縁まで感じてしまいました。
ゾウとウマとイヌとネコとハリネズミとトリとハチという、妙な組み合わせの仲間たちと暮らす王女さまのところへ、不思議なイモムシが現れました。
害される都度に大きくなっていくという、憎しみや怒りの象徴のようなイモムシです。
ハチに刺され、トリに突かれ、またハリネズミに刺されと、被害をうけるたびにイモムシは巨大になっていきます。
虐待を喜ぶような姿は怪獣のように表現されています。
巨大化を続けた怪獣は、平和な国に襲いかかるような姿にまで変身していきます。
王女さまの仲間たちみんなへの憎しみをエネルギーとしたイモムシは、最後に王女さまと対峙します。
そこで王女さまは、迎え撃つのではなく優しく諭すのです。
「もう良いでしょう」
戸惑ってしまって気を削がれたイモムシ怪獣は、怒りを鎮めるかのように小さくなり、元の大きさになり、サナギになり、蝶になりました。
虹色の蝶は、王女さまと仲間たちとともに暮らすようになります。
平和の象徴のような描かれ方に、頷くばかりです。
イモムシと向き合い、攻撃し続けるのが、今のイスラエルの姿ではないでしょうか。
今の現実を、作者は嘆いているに違いありません。